「糖質VSケトン体」前編 糖質不足による長期的影響

糖質不足による長期的影響 

私たちの脳は体重のわずか2%程度の重さしかないのに、全身で消費するカロリーの約24%も使っています。 そのエネルギー源として人類の脳はブドウ糖を最も効率よく利用するように設計されています。最近の研究では 若年層の方々がブドウ糖を適切に摂取すると、言語や文章に関する記憶力が高まることも 報告されています。 一方で 糖質が不足すると、私たちの体は代替 エネルギー源を探します。 その代表例が ケトン体です。 ケトン体は単なるエネルギー源としてだけでなく、様々な生理活性作用を持ち、 酸化ストレスも軽減するため、 脳にとっては理想的なエネルギー源と言えます。 しかしながら、 単純に糖質を制限しても、体はすぐには ケトン体を効率的に利用できません。 ケトン体を利用できない状態で糖質が長期間制限され続けると、糖質不足により様々な問題が発生します。

1.糖質の基本知識

 糖質はタンパク質 、脂質と並ぶ三大栄養素の一つです。 よく混同されがちですが糖質と炭水化物は厳密には異なります。糖質とは でんぷんや ブドウ糖などが含まれ、 炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものを指します。 近年、 糖質制限 という言葉が広まり、 糖質を悪者のように考える 風潮がありますが、 糖質は私たちの体にとって必須の栄養素なのです。

2.糖質の役割:ATPの主要材料

 糖質の最も重要な役割は ATP という体のエネルギー通貨を作る材料になることです。 ATP は車で言う ガソリンのようなもので、全ての生命活動に必要です。 話す、 考える、 歩く、 心臓を動かすなど あらゆる 活動に ATP が使われます。 私たちの体は主に糖質から ATP を効率よく作り出し、 その ATP を使って様々な活動を行います。

3.ケトン体とは?

 糖質が不足すると私たちの体は代替 エネルギー源としてケトン体の活用を始めます。 ケトン体とは、 脂肪酸が肝臓で代謝されることによって生成される物質で、主にアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸 、アセトンの3種類があります。 最新の研究によると ケトン体は単なるエネルギー源としてだけでなく、様々な生理活性作用を持つことが分かってきました。 脳内では 抗炎症作用を持ち 認知機能を改善する可能性も 示唆されています。 また、脳内のセロトニン受容体に影響を与え 、心のバランスを整える可能性も示されています。 

4.糖代謝異常について

一方で、 糖質を制限しているにもかかわらず、体が ケトン体を効率的に利用できない場合、 長期的に大きな3つの影響が現れる可能性があります 。1つ目の症状は 糖代謝異常です。 糖質を避け続けると、糖質を代謝する力がどんどん 衰えてしまいます。 その結果、 血糖値が乱高下しやすくなり、 少量の糖質でも過剰反応を起こすようになります。 また少量の糖質でも太りやすく痩せにくい体質になるなど、体重管理が難しくなります。 そしてエネルギー不足により、常に疲労感、 だるさ、 重さを感じるようになります。このような症状は、糖質制限を始めて数週間から数ヶ月で現れることがあります。 2つ目は メンタルの不安定化 です。 私たちの感情やメンタルの状態はホルモンによって大きく影響を受けています。 特に気分や感情を左右する重要なホルモンにセロトニン、 メラトニン、 そして ギャバがあります。 セロトニンは幸福感をもたらす幸せホルモンであり、 メラトニンは良質な睡眠を促す睡眠ホルモンです。 そしてギャバはリラックス感をもたらします。 これらのホルモンを作るためにはタンパク質、 ビタミン、ミネラル、 そしてエネルギーが欠かせません。 つまり、 これらのホルモンを効率よく作り出すためにも、 糖質が重要な役割を果たしているのです 。3つ目の症状は甲状腺機能の低下です。 甲状腺は、 首の前方にある小さな臓器で全身の代謝を調整する役割を担っています。 糖質が長期的に不足すると、体は 省エネモードに入り、この甲状腺の機能を低下させ、 体が冷えやすくなったり思考が極端になるといった影響が出ます。 さらには 疲労感 や集中力の低下、 むくみ の発生なども 起こりやすくなります。 また、 甲状腺機能の状態は 血液検査で確認することができます。 TSH という 甲状腺刺激ホルモンは、甲状腺に元気がない場合に数値が高くなります。 反対に FT 3 という 甲状腺ホルモンは、甲状腺機能が低下した場合 数値が下がります。これらの検査値が基準値から逸脱している場合、 糖質摂取不足による甲状腺機能の低下を疑うことができます。 

5.糖質との健全な付き合い方

糖質との向き合い方で大切なのは避けることではなく、上手に代謝できる力を身につけることです。 代謝とは 糖質を ATP に変換するプロセスのことです。 これは運動と同じで、例えば運動を始めると筋肉痛になりますが 、だからと言って運動は体に悪いとは考えず、 私たちの体はむしろこれまでは運動不足だった と理解します。 同様に糖質を食べて血糖値が急上昇したり、 眠くなったりするのは糖質を効率よくエネルギーに変換する力が弱っているからであり、 糖質自体が悪いわけではありません。

まとめ

 今回は糖質不足による長期的な影響についてお話ししました。 脳のエネルギー源として ケトン体をうまく活用することも非常に大切ですが、 その過程で糖質不足にならないよう注意しましょう。

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