私たちの体内には約37兆個の細胞があると言われており、 これら全ての細胞にエネルギーを供給するために、毎日 莫大な量の ATP というエネルギー通貨が生産されています。 最新の研究では 人体全体で1日あたり約 50kg から 75kg 相当の ATP を 消費・再生するという 見積もり が示されています。 このエネルギー生産の最前線で働いている重要な栄養素が コエンザイムQ10なのです。 研究によれば、 コエンザイム Q10の有無によって電子伝達系の効率に大きな差が生じ、 ATP 合成が大幅に減少する可能性があることが示されています。今回はエネルギー生産の鍵を握る コエンザイムQ10とはどのような栄養素なのかを見ていきましょう。
1.コエンザイムQ10コエンザイムとは何か
コエンザイムQ10コエンザイムはユビキノンとも呼ばれる脂溶性の補酵素で、 全身の細胞に存在しています。補酵素とは 酵素の働きを助ける サポート役のようなもので、代謝 やエネルギー生産に欠かせない存在です。 名称にある「Q」は分子構造にキノン環を持つことを示し、 10は側鎖にイソフレン単位が10個並んでいることを意味します。 1957年にアメリカで発見され、日本では1974年に心不全治療薬として承認されました。さらに2001年には食品としての利用も認めら、 健康補助食品の1つとして 一般に広く使われるようになっています。 この物質には 酸化型であるユビキノンと還元型のユビキノールの2つの形態があります。
酸化型は電子を受け取る役割を担い、 還元型は電子を供与しつつ、強力な抗酸化作用を発揮します。 この2つは体内で行き来しながら、エネルギー代謝と抗酸化の両面で重要な働きを果たしているのです。
2.コエンザイムQ10の主な働き
コエンザイムQ10の最も重要な役割は、ミトコンドリアで行われる ATP 生産のサポートです。 食事から得たブドウ糖や脂肪酸は分解され、 最終的にミトコンドリアで酸化されてATPへと変換されます。
この過程で生じる電子を次の反応へと運ぶ、 電子のベルトコンベアとしてコエンザイムQ10が欠かせません。 とりわけ 電子データを担う複合体のⅠ・Ⅱから複合体Ⅲへ電子をつなぐ役目を担うため、 もし 不足すれば エネルギー生産は大幅に停滞してしまいます。もう1つの大きな働きが 抗酸化作用です。エネルギー生産の過程では 副産物として活性酸素が生じます。 これが過剰に溜まると細胞や DNA を傷つけ、老化や病気の原因になります。還元型コエンザイムQ10はこれを中和し、さらに酸化したビタミンEを再び活性化させることで、 他の抗酸化物質の力を引き出す働きもになっています。
3.体内での分布と加齢の影響
コエンザイムQ10は、 心臓、 腎臓、 肝臓、 膵臓 そして 副腎といった臓器に多く存在します。 これらの臓器は常に大量のエネルギーを必要とするため、コエンザイムQ10の濃度が高く保たれているのです。 しかし 加齢とともに体内のコエンザイムQ10は減少していきます。 例えば、 心臓では20歳を100%とした場合、 80歳では40%程度まで低下すると報告されています。 これは高齢期に疲労感が増す要因の一つとも考えられており、 また加齢性の疾患と関連する可能性も指摘されています。
4.食品からの摂取
コエンザイムQ10は体内で合成されるだけでなく、食事からも取り入れることができます。 特にイワシやサバなどの青魚、 牛肉や豚肉の内臓、 ピーナッツやくるみなどのナッツ類、 さらにブロッコリーや ほうれん草といった緑黄色野菜に含まれます。ただし 健康維持の目安とされる 100mg を摂取するにはいわしを20匹以上 食べる必要があると言われており、食品だけで十分量を取るのは容易ではありません。 このため、必要に応じて サプリメントの形で補うことも現実的な選択肢となります。
5.まとめ
コエンザイムQ10は、私たちの体内で毎日 50kg から 75kg もの ATP を作り出すために必要不可欠な栄養素です 。この物質は細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアで電子の運搬 役を担っています。また、強力な抗酸化作用で老化や病気から体を守る働きもしています 年齢とともに減少していきますが 食事や サプリメントで適切に 補うことができます 毎日のエネルギーを支える大切な栄養素を知ることでより活力に満ちた生活を送ることができるでしょう。